忍者ブログ
 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


「      。」


あの時聴いた言葉

あの時
私の振り向きざまに言ってくれた


  言葉


遠い日の記憶に見たのは死にそうな私の背中を押した


 この歳になってから、ふと昔を思うと、なんて薄い時間で、短い思い出であったのだろうと思う。
あの頃はただ、目の前の物に対して一生懸命で、形振り構わぬ行動ばかりしていた。

別に大きく歳をとったわけでもない。
ただ、思いを馳せれば、やはり過ぎた分だけの年月を感じる。


「じゃ、行って来るー。」


「うん、        。」

弟に、あの人と同じ言葉を、紡ぐ。
あぁ、私はあの人と同じように笑えているだろうか。

「おー。じゃ、また後で。」
「はいよ。行ってらっしゃい、幸。あぁ、ほら転ばないようにね。」



 過ぎた年月は戻らない。

 例えほんの少しの数日でも。





 また軋む自転車にまたぐ。
そして毎朝同じようにあの道を走る。







 「おはよう、狩川さん。」

何時ものように、何時もの面々が挨拶を掛けてくる。

「今日、いつもの場所でね。」

やけに甘い声。
けれど、それに応える気は、毛頭無い。







 枯葉の踏む音が軽く響く。
「榛、好きだったよね。」
この時期の紅葉は、とても綺麗。
その紅葉が落ちて硬い地面に敷き込まれる。
紅や黄に染まって出来た、ふあふあとした地面を歩くのが、あの人のお気に入り。
でも、私は未だにそれに慣れることが出来ない。


 -さく ざく さざん


足を踏み入れ、軽く落ち葉を蹴り上げる。






 「何だ、来ないと思ってた。」
頭の後ろから、あの甘い声が聞こえた。
は、として腕にあった時計を見る。

「あれ、それとも他に用事があった?」
そういえば最近、よくこの辺に居るわね。

ーざく、ざく、ざく

一つ一つ、足を踏み入れてくる。
その度に落ち葉が音を奏でた。

「別に、関係ないでしょう。」

言いながら振り向くが、顔を合わせるのが先か否か、




そのまま視界が暗転した。




「なぁに、その態度。」
頬に、薄く湿った落ち葉の感触を感じる。
頭の上からの声に、もう応えるつもりはさらさら起きなかった。

「返事、ないんだけど。」

そのまま腹部に鈍痛。

「げほっ、」
「あら、色気の無い声。」

これは、色気のある行動なのだろうか。

次いで、頭皮が引っ張られる。
髪が抜ける、独特のブチブチという音が頭に響いた。

違う声がちらほらと聞こえる。
なんだ、他にも居たのか。

「ちょっと、聞いてる?」

その中の声の一つが、私を無理やり起こして壁に押し付けた。
叩きつけられた背中が、痛い。

たった一人のために、ご苦労なことだ。
ほんの少しだけ、視線を上げる。


「  ぁ。」

「何、その目?」


もれた声には気がつかない。
どうやら相手方にとって、気に食わない目でもしていたようだ。
されど、その態度に興味は湧かない。




ーさく さく


軽い、音が耳に入る。
枯葉が踏まれて、少し舞い上がると奏でる、音。





ーさく さく さく、  さくさくさく




「あのさ、」


枯葉のメロディーと甘い声の不協和音。


でも私の視線の先には、



「本当、いい加減にしないと、」












            はためく  白衣








「しないと、どうなるんだろうな。」


「ッ!」



現場から2mの距離。
辺りにその声はやけに響いた。


「か、しわぎ、先生…。」


そのやけに通るテノールに、
一番驚いたのは目の前の甘い声じゃなくて、

悔しいことに、


「  は、る…。』


私の鼓動のほうだった。





 「いつもいつも、えらいな。」
なにが、と私は恍ける。
「だって、いつも、ココでそんなことしてるだろ。」
だって、それが楽しいから。
だって、アナタがくれたのよ、これの動機。

「なんのことだ?」

 そういって、今度はあの人が恍ける。



 それにしても、本当に、



 『いつもいつも、ご苦労だな。」



白い、保健室。
左足には、それより白い包帯。
「…いつから、知っていたの?」
思わず口を吐いてでた言葉。
「ん、そうだな。」
熱い、お茶を淹れながら考え込む。
危ない、と思いながらもそれは口にしない。
「夏、終わって、くらいからかな。」
初めて逢ったときから、感づいてはいたけどな。
そういって、今度はしっかりと手元を見ながらお茶を淹れる。

「そ、っか。」

なんだか、とても惨めな気分になった。
理由は分からない。
ただ、普通は助けてもらって喜ぶところなのだろうが。

「なんだ、絣、」

コト、と机に熱そうな湯のみが置かれた。

「お前、泣きそうだぞ。」
「え、?」

そうかな、それって、とても変な顔をしているってことじゃなかろうか。
別に、変な顔をしていても、困るようなことはーーー

「絣」

意味も分からず戸惑っていると、目の前の保険医はいつになくテノールを響かせた。

「ほれ、我慢するな。」

少し、力強く頭に手が置かれた。
その反動が、腹部と足とに響いて、




ほんの少し、胸が詰まった。




   ぽろぽろぽろぽろぽろぽろ



土で汚れた制服のスカートに、ぽつぽつ雫が落ちる。


 その様を、何も言わずに、あの人は傍に居て、見守ってくれていた。



 辺りはとても暗い。
昨日もこんな時間になってしまったような気がする。
「あぁ、帰らないと。」
一人こぼすと、あの人はまだ気になっているようだった。
「な、教えてくれないのか。」
暗くても、顔くらいは見える。
酷く困っていて、情けなくて、それでいて、

「だって、言ってくれたでしょ。」

何を、とまだ同じ顔をして言う。

「ほら、あの時、言ってくれたーーーー、





『「頑張れよ』」






帰り際、背中にぶつかった言葉。
辺りはもう暗い。
足元が、滲んで見えないくらいに。


ぽつぽつぽつ


「ねぇ、榛。」
未だ、背中に居るであろうあの人の名を呼ぶ。
「どうした、絣。」
木のタイルで出来た廊下を、スリッパで擦る音が近づく。
私は、顔を伏せたままだった。

「雨がね、降ってきているみたいなの。」

声が、震える。
きっと、雨が降ってきているから、寒いんだ。

「今日ね、雨降るって知らなかったから、」

この時期は、其れでなくても肌寒いのに。
ただ、今日はとても晴れていて、
気温もとても心地の良いものだったから。

「傘、持っていないの。」

ちょっと薄着もしてきてしまったし。
ほら、声が震える位寒いし、
だから、


「   送って 、  いって   くれ る?」


言い終わるのが早いか否か、

私の視界は、





白衣の中で、暗転した。






 「うし、帰るかー。」
どうもスッキリしたのか、榛は伸びをして車に向かう。
「うん、帰ろうかー。」
私が向かうのは、駐輪場。
「ココで逢うなら、一緒に来ればよかったな。」
そうだね、といって苦笑する。
「そうだ、なんなら一緒に帰って、明日送ろうか。」
明日、丁度学校が休みだから、俺も休みだ。
そういって、私の腕を掴む。
まぁ其れも悪くない、と思ってしまう。
「あ、そうだ。帰りに幸にお土産を買ってもいい?」
「なんだ、まったく弟好きだな。」
幸君に彼女が出来たら、大変だな、といって笑われた。






 「頑張れよ、絣。」

 「うん、いってきます、榛。」




今朝出た家の表札は、

『柏木』






-----------------------------------------------


とても無理やりに終わらせてみた。
うっへー!本当はもっと頑張って長めに終わらせたかったのに!

今まで暖めていた内容の、小説。
本当はもっともっと長くて、いろんなエピソードを盛り込みたかったけど、ちょっと急いでいたので短めに。
サイトに上げるときはちゃんとした構成を作ってから製作に取り掛かろうかとおもいます。


さて、キャラ設定も固まってきたところで、明日から勉強しながら頑張りますかな。



[2008/6/16 ah506 (c)蒼月氷牙]

PR

COMMENTS
COMMENT FORM
TITLE

NAME

EMAIL

HOME
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字PASS
COMMENT
TRACKBACKS
TRACKBACK URL
 
!注目!


◆当Blogにおける画像・文章等の著作権は管理人『蒼月氷牙』にあります。

此れも個人で楽しむなどといった目的以外での無断転載・複製等の行為を禁止しています。

◆また、使用している素材なども、配布先(素材配布サイト様)からお借りしているものですので、それらの著作権はその配布先管理人様にございます。

勝手に持ち出すようなことはおやめ下さい。

詳しくはMailやコメント等から管理人へご連絡ください。

自己
名:
蒼月 氷牙(アオツキ ヒョウガ)
ROでは朋藍(ホウラン)です
標準では氷牙使ってる
年:
35
性:
女性
誕:
1988/10/06
基本的にO型の大雑把。
社交的らしいけど、チキンなのでそんなこと無いです。(痛)ていうかネガティブの自暴自棄。ww

時々趣味による短文小説ならぬ駄文と詩が書かれるかと思いますのでお気をつけ下さい。


ねりま猫 40頭のSOS!

lifecats100
lifecats100



恋愛成績表
Mail
何かありましたらこちらへ ■MailBox
検索
OTHERS
Designed by TABLE ENOCH
Powered by [PR]